研究業績
氏名 一石 英一郎
1. Eight cases of gastric tumors with calcification. Intern. Med. 34,(1995),1038-1042.
Eiichiro Ichiishi, Takafumi Kogawa, Satoshi Takeda, Kunio Yanagida,
Toshikazu Yoshikawa, Motoharu Kondo.
2. Possible paracrine growth of adenocarcinoma of the stomach induced by granulocyte colony stimulating factor produced by squamous cell carcinoma of the oesophagus. Gut 46,(2000),432-434.
Eiichiro Ichiishi, Toshikazu Yoshikawa, Takafumi Kogawa, Norimasa Yoshida,
Motoharu Kondo.
3. Effect of retinoic acid on cellproliferation- related gene expression in Raji cells induced by12-O-tetra-decanoylphorbol-13-acetate. J. Clin. Biochem. Nutr. 30,(2001),21-31
Eiichiro Ichiishi, Toshikazu Yoshikawa, Takako Takai,
Harukuni Tokuda, Yasuhiko Yoshida, Kaoru Hanashiro,
Tsuguchika Kaminuma, Norimasa Yoshida and Hoyoku Nishino.
4. MIAX: A new paradigm for modeling bio-macromolecular interactions and complex
formation in condensed phases. Proteins: Structure, Function and
Genetics 48,(2002), 696-732
CA. Del Carpio, Eiichiro Ichiishi, Atsushi Yoshimori, Toshikazu Yoshikawa.
5. Effect of exercise on hepatic gene expression in rats: A microarray analysis.
Life Sciences 75,(2004),3117-3128
Wataru Aoi, Eiichiro Ichiishi, Naoyuki Sakamoto, Atsumi Tsujimoto, Harukuni Tokuda, T. Yoshikawa.
他 45編 計 英文原著論文 50編
参考論文 和文 39編
著書 和文14冊 英文 6冊
一般演題発表(和文)73件、招待/特別/シンポジウム(和文)36件
一般演題発表(英文)9件、招待/特別/シンポジウム(英文)23件
その他(受賞等)受賞3件, 国際招待講演6件 特許 国内6件 国際3件
学位論文 " Effect of retinoic acid on cell proliferation-related gene
expression in Raji cells induced by12-O-tetra-decanoyl phorbol-13-acetate.
「Raji細胞における12-O-tetra-decanoylphorbol-13-acetateにより誘導される増殖関連遺伝
子発現に対するレチノイン酸の及ぼす影響についての検討」
医学博士 (京都府立医科大学)平成13年4月27日
研究業績説明
氏名 一石 英一郎
大学院在籍前から、基礎研究と実地診療につながるテーマに従事しており、実際の臨床検体を用いた臨床研究で成果を発表した(論文1,2)。大学院在籍時は、大学院から推薦され東京大学大学院薬学系研究科に特別研究生として国内留学を行い、その当時本邦において先駆的にDNAチップ・マイクロアレイを用いて成果を発表した(論文3)。大学院修了とともに京都府立医科大学第一内科学研究室長として、国際共同研究としてタンパクータンパク相互作用の画期的な予測システムを構築し(論文4)、健常運動時における生体の動態を遺伝子—タンパクレベルにて肝臓で初めて解析を行った(論文5)。DNAチップ・マイクロアレイを軸に、タンパクレベルでの高次構造の検証に至るまで最先端計測機器を駆使して、実地診療での臨床経験を基に予防医学を目指した先駆的な研究業績を挙げている。
第一の論文では、自験例である6例の特殊な癌(石灰化を伴う癌)について患者の特徴・癌の特徴をミクロからマクロに至るまで臨床的検証を行い、更には国内の全症例もまとめて、その特徴について臨床研究として発表した。石灰化を伴う癌は超音波検査やCTで見つかりやすいが、その予後は癌の種類によって大きく異なり、同じ石灰化を伴っていても発見時の組織検査によってその後の治療成績や予後が異なるので、診療の上では早期の指針及び治療方針の決定が重要であるという事を明らかにした。
第二の論文では、人体において多発的に癌が発生した場合、一方の癌から成長因子が分泌され、paracrine(傍分泌)形式で、他方の癌に存在するレセプターを経由して癌が相互作用により発育する可能性を実際の臨床症例において世界で初めて示した。これは抗癌剤による癌治療において骨髄機能低下症を併発する事がよくあるが、GCSF(顆粒球増殖因子)や他の成長因子にて改善を促す方法が頻繁に行われつつある。しかし安易な成長因子や増殖因子刺激が癌の増殖を助長する危険性もあり慎重な加療が必要である事を、実際の臨床症例で示した重要な知見であると考えられる。
第三の論文では、最近アンチエイジング分野において脚光を浴びているビタミンA(レチノイン酸)に焦点を当てて、癌予防スクリーニング系で用いられるヒト細胞において、最先端機器であるDNAチップ・マイクロアレイを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行い、レチノイン酸のヒト細胞における遺伝子レベルでの変化を検証した。更に膨大な遺伝子発現データは却って混乱を招くという批判が国際的な問題となっていたが、国内外で先駆けて細胞伝達データベース(国立医薬品食品衛生研究所との共同研究)との照合を行い有意義なパスウェイ抽出を試みるといった成果を発表し、国際会議でも3回に渡って招聘講演を依頼され本邦代表にて講演を行った。
第四の論文では、タンパクータンパク相互作用についての画期的な予測システムを構築したものである。DNAチップ・マイクロアレイにて細胞内の膨大な転写レベル情報はすぐに入手できるものの、それらがタンパク発現レベルでどのような相互作用をするかを実際に実験すると、膨大な時間とコストがかかってしまう。そこでまずコンピューターシュミレーションにて予測を行い、有意義な分子をピックアップする重要性を認識し、このようなタンパクータンパク相互作用の予測システムを共同開発するに至った。
第五の論文では、運動による健康増進の効果を初めて遺伝子・タンパクレベルで肝臓で検証したものである。ラットに二週間のランニングを行わせ肝臓における遺伝子変化とタンパク発現変化について解析を行った。まずDNAチップマイクロアレイにて肝臓における8000遺伝子以上の網羅的解析を行い、そこで運動によって有意に変化した遺伝子群についてタンパク発現レベルでも検証を行った。この知見により、人体において「運動」というものが、生活習慣病の予防や改善に繋がるといった経験的或いは伝承的な情報を、最先端研究機器にて実証したことになり、予防医学の観点からも重要な意義があると考えられる。